日本の製造業の今
日本の高度経済成長を支えてきた製造業。
モノづくり大国として世界に名を知られています。
ところが、現在の日本の製造業は非常に苦しい局面に立たされています。
輸送手段の発達により、全国の加工業がライバルとなり、拡大と縮小の二極化が進んでいます。
さらにグローバル化により、世界と戦わなければいけない状況になっています。
大手メーカーが海外に生産拠点を移し、繁栄をつづけましたが、
その際の技術流出のツケが今、技術力の肉薄となって、我々に脅威を与えています。
生産拠点を日本に戻す大手メーカーが出てくる一方で、技術的優位を出せなくなっている中小企業としては、価格競争に巻き込まれる状況にあります。
製造業の人材確保の状況についてみていきたいと思います。
製造業の人材確保の状況
出典:経済産業省 我が国ものづくり産業が直面する課題と展望
国内製造業にとって人材確保は大きな課題です。
2016年には22.8%だったビジネスにも影響が出るとした企業が、2018年には35.7%と増加しています。
状況として大きく3つの事が考えられます。
受注が増えている
受注が増えて、今の人数では対応できない。
離職の増加と採用が困難
定年退職の増加、離職に対して寛容な時代背景などにより、離職する人が増加し今までの仕事量に対して人が足りない。
求人倍率の上昇からも見て取れる通り、採用が困難で、離職の増加に対応出来ていない。
業務の複雑化に対応できていない
取引先から求められる品質・納期・価格などに対して、今の従業員では対応するスキルが足りない。
特に確保が課題となっている人材
特に確保が課題となっている人材は以下の通りです。
出典:経済産業省 我が国ものづくり産業が直面する課題と展望
技能人材の確保が課題
実に55%もの企業が技能人材の確保が課題であるとしています。
IT・IOTによる生産性向上を目指す政府としては、デジタル人材が課題であると考えているはずなのですが、現場では違う考えのようです。
その背景を私なりの解釈で考えてみました。
定年する熟練工の引継ぎの問題
寝る間も惜しんで働いてきた日本を支えた世代が、定年を迎えて来ています。団塊の世代も70を過ぎてきたので、現役を退く人も増えて来ていると思います。
中小製造業の現場では、70歳近い人が働いている事も珍しくありません。彼らの経験と技術は間違いなく会社の戦力になるため、会社も出来るだけ長くいてほしいと考えている事でしょう。
その熟練工の引継ぎが上手く進んでいないのではないでしょうか?
経営者の考え方の問題
経営者が現場に出て働いている企業は、技術革新が進んでいない事が良くあります。
経営者が昔からのやり方にこだわっている事、もしくは新しい機械や方法に対して自分が対応出来ないため気後れしてしまっている事などが考えられます。
経営者が職人の場合、今の技術を捨てて新しいものに挑戦するという柔軟さが特に求められると考えます。
技能人材の定義が曖昧
この調査では技能人材というくくりになっていますが、実際に経営者が思う技能人材という定義そのものに違いがあるのではないでしょうか?
人は欲張りなものです。
労働力が足りない場合でも、出来れば技能人材が欲しい。
技能人材=優秀な人でITも加工も数字も全部見れるような人が欲しい。他にも色々とあるでしょう。
他のワードが部門に分かれるようなものに対して、技能人材だけ、どの部門にも当てはまるような気がします。
実際中小企業では部署を明確に分けられない人数で回している場合もあり、そういった場合何でも出来る人を求める傾向にあります。
まとめ
国内製造業にとって人材確保は大きな課題です。
国内製造業では、少子高齢化の影響から今後も定年退職が増えてきます。
その中で、いかに優秀な人材を確保できるかは大きな課題であると言えるでしょう。
中小企業には変化が求められている
優秀な人材を取りたいのはどこも同じです。
優秀な人は大手に勤めたいと考える事が多いのではないでしょうか?
大手の魅力は安定・給与や労働条件が良い・大きなプロジェクトに参加できる・ビジョンが明確など色々とあると思います。
中小企業も何かしらの魅力を掘り起こし、育てて、魅力をアピールする必要があります。
高齢化はまったなしです。一年一年確実に歳を重ねていきます。
今いる従業員を育てる方向にシフトし、内部から優秀な人材を発掘するのも重要だと考えます。
いずれにしても、今のまま人材不足で嘆いているようでは、状況は悪化していくだけです。
多くの企業が人材不足と感じている今、人材を確保出来ている企業の成長は著しいでしょう。
成長を加速するためには、今まさに人材確保に向けて企業は大きな変化をしていくべきだと考えます。
次回はどういった対策をしていくべきかをお話していきたいと思います。